三戸 素子ヴァイオリンリサイタル2015
<ピアノの巨匠、イェルク・デームス氏とともに>
11月17日 (火) 7pm時 オペラシティ・リサイタルホール ¥5,000
- ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ 第5番 ヘ長調 作品24 「春」
L.v.Beethoven : Sonate für Violine und Klavier Nr.5 “Frühling” F-Dur op.24 - ドビュッシー:ヴァイオリンソナタ ト短調
C.Debussy : Sonate pour violon et piano - シューマン:間奏曲 F.A.E.ソナタ 第二楽章 ヘ長調
R.Schumann : Sonate für Violine und Klavier ” F.A.E.” II.Intermezzo - ブラームス:スケルツォ F.A.E.ソナタ 第三楽章 ハ短調
J. Brahms : Sonate für Violine und Klavier “F.A.E.”III.Scherzo - フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調
C.Franck : Sonate pour violon et piano A-Dur
イェルク・デームス氏のピアノレッスンの通訳をするようになって数年が経ちます。私はヴァイオリンが専門ですが、ピアノのレッスンもけっこう経験があります。それで気軽に引き受けたのですが、レッスンに立ち会ってみると、それはとても大変なことでした。
「通訳をする」ということは先ず「話し手の意図を把握する」ということです。私は今まで様々な音楽のジャンルを勉強し続けてきました。欧米の音楽界も長きにわたって身近です。通訳で苦労したことなどありませんでした。
けれどもデームス氏の知識は、それを遥かに超えたものでした。彼は月並みな「ある程度までいったら、その範囲で世の中を渡ってきた音楽の仕事人」ではなく、「生涯にわたって、楽曲の原点と真髄を探究し続けている芸術家」なのでした。それも音楽の国オーストリアに生まれ、幼少から飛び抜けた才能をもち、80余年ずうっと音楽に集中して誠実な生き方をし、煌めく歴史的芸術家たちと音楽を共有しあった音楽家なのでした。その上今なお、音楽の深い深いところまで実地でわけいっている現役でした。だから安易に音楽の話などすると、たちどころに情け容赦なく斬られてしまうのでした。
この突然私の前に現れた「ユネスコ世界遺産」のような人物と共演してみたい、とはとても思えませんでした。共演がイメージできるようになってきたのは、何度も通訳を重ね、会話の仕方もわかってきた最近です。
デームス氏のお気に入りの曲を中心にまとめたプログラム。遅過ぎないうちに実現出来た、贅沢でスリリングな瞬間です。ヴァイオリニスト 三戸素子